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弱者救済と差別② [2005年4月]

弱者救済と差別②

さて、今回は在日韓国人・朝鮮人高齢者無年金訴訟について取り上げますが、1回目の学生障害者無年金訴訟と同じような視点で見ていきたいと思います。
それでは、朝鮮新報の記事とそれを支援する方々のページから国の反論部を引用します。

京都・無年金高齢者訴訟
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原告が意見陳述 「当然の権利、保障を」
日本の外国人排除政策によって無年金状態に置かれている京都府の同胞高齢者5人が、
長い間精神的苦痛を受けたとして日本に損害賠償を求めた訴訟(2004年12月21日提訴)の第1回口頭弁論が24日、京都地裁で行われた。支援者、同胞らが傍聴する中、原告団長の玄順任さん(78)が意見陳述を行い、差別の実情を訴え植民地支配による被害者の人権保障を訴えた。

弁論では、原告側弁護団の伊山正和事務局長が訴状について説明。日本が年金創設時に国籍条項で外国人を排除したのは違憲で、撤廃時に経緯措置を取らなかったのは立法不作為にあたると主張し、「国は彼らが死ぬのを待っているのか」と強く訴えた。

玄さんは「在日が年金をもらえないのは不公平。戦争中は朝鮮人をこき使って、戦争が終わったら利になることは全部カットされた。旧植民地出身者の犠牲者が死ぬまで『悪い奴』のレッテルを貼られることなく、人間としてあたりまえの権利を保障してほしい」と述べた。

終了後、報告集会が行われ、原告、弁護士、支援者らがそれぞれ発言。「戦争60年が経とうとしているが、いまだ過去の清算がされていない」「ハルモニたちはただ年金がほしいのではない。差別を無くしたいのだ」などと訴え、支援を呼びかけた。
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国側からの反論
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■国賠法において遵法ではない
最高裁の判例(昭和60年11月21日、在宅投票制度廃止の裁判で)において、『国会議員は、立法に関しては、原則として、国民全体に対する関係で政治的責任を負うにとどまり個別の国民の権利に対応した関係での法的責任を負うものではないというべきであって、国会議負の立法行為は、立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会があえて当該立法を行うというごとき、容易に想定し難いような例外的場合でない限り、国家賠償法1条1項の規定の適用上、違法の評価を受けないものといわなければならない。』とされている。

これは、国会議員がある法律を作らなければならない(または作ってはならない)ことが、憲法上明確なのに、作らなかった(または作った)という場合だけが違法になるということであって、その法律の内容が違憲・違法かどうかとは別の問題。(ハンセン病国家賠償訴訟の熊本地裁判決は、最高裁判決に反するもので認められない)

原告らは、立法内容が違憲違法であり、「容易な立法を怠った」と主張しているだけで、あてはまらないし、内容は違憲遵法でもない。

■立法府の広範な裁量権が認められている
憲法14条(平等原則)においても、憲法25条(生存権保障)においても、立法府の広範な裁量(自由に決める権利)が深められている。

塩見訴訟最高裁判決(平成元年3月2日)では、『障害福祉年金は・・・・・・立法府はその支給対象者の決定について、もともと広範な裁量権を有している』『社会保障上の政策において、在留外国人をどのように処遇するかについては、国は、特別の条約の存しない限り、当該外国人の属する国との外交関係、変動する国際情勢、国内の政治・経済・社会的諸事情等に照らしながら、その政治的判断によりこれを決定することができるのであり、その限られた財源の下で福祉的給付を行うに当たり、自国民を在留外国人より優先的に扱うことも許されるべきことと解される。』ゆえに、国籍条項は違憲ではないし、経過措置を作るかどうかは広範な裁量に含まれる・‥としている。(老齢年金等も同様)

■国籍要件は合理性がある
在留外国人は本国への永住帰国等により、25年の受給資格期間をみたすことができないこともあり、かえって不利益をもたらすので、外国人を除外したことは不合理なものではない。(福祉年金も同様)
整備法による国籍要件の撤廃も、難民条約への加入に伴う人道的措置であって、過去の国籍要件が不合理だからという理由ではない。

■在日韓国人の法的地位
日本国と大韓民国との協定4条において、在日韓国人について 日本国における教育、生活保護及び国民健康保険に関する事項が挙げられているが、国民年金は対象から除かれている。これは、外国在住の国民に対する生活擁凄の責任はその本国政府が担うべきであり、目前の応急的な救捕手を要する事態について擁護が行われれば足りるから。

●国際人権規約こ違反しない
「世界人権宣言」
勧告的性質であり、これを基に具体的制度の適否を検討することはできない。

「国際人権規約A規約」
塩見訴訟の際高裁判決で『社会保障についての権利の実現に向けて積極的に社会保障政策を推進すべき
政治的責任を負うことを声明したものであって、個人に対し即時に具体的権利を付与すべきことを定めたものではない』としているのであり、違反していない。

「国際人権規約B規約」
区別的な扱いを全て禁止する趣旨ではなく、合理的な区別が許容されることは規約人権委員会も認めて
いる。国民年金制度の支給対象者、外国人の取り扱い(国籍要件)には合理性があるので、これにも当てはまらない。
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この支援者のページには、原告の声明もありますので、興味のある方はご覧下さい。
上記から、これら原告が訴えたかったことは、

・在日韓国人・朝鮮人が年金をもらえないのは憲法14条(平等原則)及び34条(生存権保障)に反しており、違憲である。

・国際人権条約及び難民条約を批准していながら、法的措置を怠ったために原告らが無年金になったことは違法である。

・自らの意思に関係なく、強制連行された人達への賠償をすべき

・故に、原告らに年金の支給を求める。

という主旨のようです。
前回取り上げた、学生無年金訴訟の場合は、国籍ではなく、年金の加入か未加入かを問題として取り上げましたが、今回は国籍がキーワードになります。

ここで、訴求ポイントであるところの、憲法14条及び25条を抜粋すると、

憲法14条
すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

憲法25条
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

となっています。
一部例外的な取り扱いを除いて憲法はその全てにおいて日本国籍を有している者に向けて発せられているものであり、日本に居住しているということを指しているのではありません。
つまり、上の2つの条文で認められている権利は日本国籍保有者に対して有効とあるものであり、日本在住ではあっても外国籍を有している人に適用されないのは明らかです。
また、人権条約や難民条約に対してですが、国側が言っている事は、引用するまでもなく、合理的な理由でありそこに違法性を見出すことは出来ません。

国籍に関して言えば、国家間の協約で定められているとおり、原告らに年金を支払わなければならない/支払う権限があるのは、本国のみであり、居住しているという理由で日本相手に訴訟を起こすということは、通常の感覚では有り得ないことです。このことは、参政権についても同様のことが言えます。

その他社会保障に関しても在邦外国人に関しては、その国との外交上の問題をはじめ社会的な様々状況を勘案して、決定されるというスタンスは当然の事であると言えます。

強制連行、併合に関しては、国家間で個人賠償を含めてその補償は完結しており、そもそもそれを持ち出すこと自体が見当違いであると思いますが、仮に強制連行により不利益を被ったとしても、請求先は国籍のある本国に対してであり、日本にそれを向けるのはお門違いでしょう。

戦争時代における個人補償については、慰安婦問題にしてもまず、訴える先は本国であるということを勘違いしては困ります。
また、過去において、強制連行されたということが立証可能な事実であったとしても、戦後日本は、本国への帰還を一度たりとも制限したことはないということを考慮しなければなりません。
原告らは、自らの意思で日本に留まることを選択したのであり、さらに帰化という選択も取らなかった、が故に無年金であるという側面をまず考えるべきでしょう。

そういう意味では、前回の学生無年金訴訟の原告と同様に本人の選択・過失という原因が無年金という結果を生み出したことをまず考えるべきでしょう。
勿論、社会的弱者といわれる人達をも含めた互助・互恵の観点から救済すべき事由はあり、何らかの救済特例は必要であると思いますが。

ところで、日本人の高齢者と比較するとどうでしょうか。
年金は国民年金、厚生年金、共済年金などの違いはあっても加入した上で本人が掛け金を払わなければ、受給できません。
ですから、日本人であっても加入せず、掛け金を支払っていない(減免の措置をとっていない)人は受給できません。

もちろん、当該原告らは加入することすらできないという事情がありますが、少なくとも掛け金を納めていない人であれば、国籍の別に依らず年金はもらえないのですから、そういう意味では平等であると言わざるを得ません。
もし、当該原告らが年金をもらえるとすれば、掛け金を払ってない日本人高齢者にも権利が発生し、掛け金を真っ当に納めて年金を受給している人との間で公平を欠きます。

社会的な弱者と言われる人達を救済することは必要なことでしょう。
しかし、弱者という救済すべき理由があったとしても、

「無理を通せば道理が引っ込む」

ようなことはあってはなりません。合理的な区別は、何ら問題はないからです。

自己選択の結果を自己責任として甘受しながら、救済を求めるというのであれば、私も多いに賛同できます。

しかし、自分達のミスを棚に上げて、他人に責任を転嫁するというのは(例え同情に値する人達であっても)単なる我儘の領域を出ないことであると考えます。
それを弱者だからということで、法理を曲げれば、それは(原告らにとって有益であっても)差別であると思います。

人には誰にも侵されない尊厳があります、私は合理的でない優遇もまた差別であり、それはその人達の尊厳を著しく損なうものだと思います。
ましてや、合理的でない優遇を求める人達は、己の尊厳を自ら貶めているということに気付いて欲しいと思います。


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コメント 2

すっきー

さて、誰もコメントしていないところでこっそりと。

実は、私の住んでいる隣の地域にはあちら系の方々が沢山いらっしゃいます
飲食店を営む方が多いので夜は夜中まで大騒ぎ。ケンカよく聞こえます・・・駅前なだけに、日本人に絡む方も少なからずいます。

普段は暴言を吐きませんが、国際試合が行われた日には・・・それはひどいもんです。日本語、某語いりまじってなじりあいです。安眠妨害なんですよね、正直。
戦争がどうたらだの、因果応報だの、ハンギョレの制裁?など言いたい放題。それだけならまだしも、器物破損まで行う始末。。
警察もヤレヤレと動き追っ払うだけ。国家権力だのなんだのと・・・。

・・・年金受給・・・次から次へと・・・すごいっすね。。
あんたら、国民ちゃうやろと。ああ、愚痴ってしまいました。。すみません。
ホント、どうにかならんかね。
by すっきー (2005-04-05 18:22) 

FD3S

すっきーさん、こんばんは。
コメント、いらっしゃいませ。
十把一絡げでどうというわけではないんですけどね、常識に欠けた行動についてエントリにしていくと、往々にして彼らの言動にぶつかるわけです。
確かに差別はあったのだろうと思います。偏見もあると思います。
でも、
当人達の被害妄想とそれに依拠した主張の矛盾にも原因がないわけではないんですよね。
彼らは、よく被害者という側面をアピールしますが、被害者であっても果たすべき義務があるわけだし、それによって与えられる権利には制限があるということを反故にして言いたいことを言う姿勢にはどうしても拒否反応を示してしまいます。
この原告達は税金を納めることと年金受給権を混同してるみたいだし。
by FD3S (2005-04-05 20:17) 

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