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そうじゃないでしょ [2005年4月]

そうじゃないでしょ

差別と言う言葉を記事に見たので、調べてみると、区別でした。

朝日新聞から。

日本男性と比女性の子ら9人、国籍確認求め集団提訴


婚姻関係にない日本人男性とフィリピン人女性の間に生まれ、日本国籍取得を求めたが不受理となった子ら9人が12日、「現行の国籍法は法の下の平等を定めた憲法14条に違反する」として、国を相手に国籍の確認を求める訴訟を東京地裁に起こした。原告側の弁護団によると、婚姻関係にない日本人の父と外国人の母の間の子が国籍確認を求めて集団提訴するのは初めて。

原告は東京、神奈川、千葉、埼玉在住の5~11歳の計9人。訴えによると、日本で生まれ育ち、いずれも出生後に父親に認知された。

国籍法は婚姻関係にない日本人男性と外国人女性の子について、母胎にいる間に父が認知すれば日本国籍を取得できると定めている。認知が出生後の場合、父母が結婚すれば日本国籍を取得でき、結婚しなければ取得できない。

提訴した子らは父母が結婚していないケースで、母親9人はそれぞれ今年2~3月に子の代理として国籍取得を求めたがいずれも不受理とされた。9人の子はフィリピン国籍となっている。

原告側の弁護団は「親が結婚しているかどうかは子がどうにもできない事情。親が結婚していない子を差別するのは憲法違反だ。ほかにも多くいるとみられる同じ境遇の子らが国籍を得る権利を実現したい」と話した。

東京地裁では13日、子1人が03年2月に起こした同様の国籍確認訴訟の判決が言い渡される予定で、裁判所の判断が注目される。

集団訴訟の原告と母親、代理人の弁護士らは提訴後、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見した。ロサーナさん(40)一家の場合、長女(7)は認知が出生後だったためフィリピン国籍。一方、次女(3)は認知が出生前で日本国籍を取得できた。

ロサーナさんは姉妹で異なるパスポートを掲げ「認知の時期が国籍取得にかかわるとは知らなかった。日本で生まれれば国籍がとれると思っていたのに」と話した。


またですか。

国籍法と憲法14条が争点になっています。まずは国籍法の該当部分を引用してみましょう。

(出生による国籍の取得)
第2条
子は、次の場合には、日本国民とする。
 1.出生の時に父又は母が日本国民であるとき
 2.出生前に死亡した父が死亡の時に日本国民であつたとき
 3.日本で生まれた場合において、父母がともに知れないとき、又は国籍を有しないとき

(準正による国籍の取得)
第3条
父母の婚姻及びその認知により嫡出子たる身分を取得した子で20歳未満のもの
(日本国民であつた者を除く。)は、認知をした父又は母が子の出生の時に日本国民であつた場合において、その父又は母が現に日本国民であるとき、又はその死亡の時に日本国民であつたときは、法務大臣に届け出ることによつて、日本の国籍を取得することができる。

次に憲法14条ですが、1項のみ引用します。

第14条
すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。


さて、国籍法の第2条のうち、今回の原告の父親が日本人ということですから3は除外、2も存命なら除外です。1は、出生時に父親が認知していることが必要になるようですので、これも記事にあるとおり、適用除外になりそうです。

次に同法第3条ですが、父母の婚姻と認知の両方が必要となる時点で適用除外になります。

次に憲法14条ですが、これは国民に対して付与されるべき権利です。現時点で日本国民でないものにこの条文は適用されません。
その他の条文を満たすことなく、この条文の権利のみを主張するのはむしろ法の下の平等を損ねる主張です。

さて、日本国籍をどうしても取得したいのであれば、「帰化」という選択枝も可能です。とは言っても、こちらにも制限がありますが。

①母親が5年以上10年未満の期間、日本に在住しており、未婚のまま帰化する場合
②母親が10年以上の期間、日本に在住しており、未婚のまま帰化する場合
③母親が子供の父親と結婚する場合
④子供が日本人の養子となった場合

①のケースでは、国籍法第5条を満たすことが帰化の条件になります。

第5条
法務大臣は、次の条件を備える外国人でなければ、その帰化を許可することができない。
 1.引き続き5年以上日本に住所を有すること。
 2.20歳以上で本国法によつて能力を有すること。
 3.素行が善良であること。
   4.自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によつて生計を営むことが
    できること。
 5.国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によつてその国籍を失うべきこと。
 6.日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破
    壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て、若しくは主張する政党その他の団体
    を結成し、若しくはこれに加入したことがないこと。


法務大臣は、外国人がその意思にかかわらずその国籍を失うことができない場合において、日本国民との親族関係又は境遇につき特別の事情があると認めるときは、その者が前項第5号に掲げる条件を備えないときでも、帰化を許可することができる。

次に、②のケースの場合、これは第6条第1項第3号の規定に当てはまりますが、第5条に含まれるので、第5条を満たせば帰化が可能です。

③のケースは、子供の父親と結婚し3年以上日本に住むか、結婚して3年以上経過していて、かつ日本に1年以上住んでいれば、第5条第1項第1号及び2号を除く各号を満たすことで帰化が可能です。

④のケースは、 養子縁組に何らかの制約があるかもしれませんが、国籍法のみであれば、第8条第1項第2号の「日本国民の養子で引き続き1年以上日本に住所を有し、かつ、縁組の時本国法により未成年であったもの」に該当すれば帰化が可能です。

 さて、もう一度記事の主張をおさらいしてみましょう

原告側の弁護団は「親が結婚しているかどうかは子がどうにもできない事情。親が結婚していない子を差別するのは憲法違反だ。

これは、親を選べない子供に対する差別であるという論旨ですが、そうでしょうか?
もちろん、子供に罪はないでしょうが、と同時に国にも罪はないでしょう。
私のような法律の素人でも調べれば、これが合理的な区別であることがわかります。弁護士であれば、当然熟知しているはずの条文ばかりでしょう。
つまり、弁護士はそれを承知の上で、「差別」と断じて国を訴え、法を曲げよと言っているのです。これは何か作為的なものを感じます。

もちろん、この子供達が日本国籍を取得しなければ生存に影響を及ぼし兼ねないという特別な事由があるのであれば、人道的な観点から何らかの措置を講じる必要はあるでしょう。
尤も、母親が正等な理由で本国に帰ることが出来ない特別の事情があり、日本人の父親を捜しだすことが不可能であるなどの条件の下でになりますが。

今回の件で罪があるとすれば、親である日本人の父親と外国人の母親の罪でしょう。
国籍法に抵触するかもしれないのに、

認知の時期が国籍取得にかかわるとは知らなかった。日本で生まれれば国籍がとれると思っていたのに

というのは、親としての責務を果たさない自己の過失の域をでません。
日本人の父親の責任は追及すべきでしょう、こういうときこそ、フェミニズム運動をしている人達の出番なんですが、何かしているんでしょうか?

弁護士の主張については、毎日の記事がやや詳しく載せています。該当箇所だけ引用します(全文はリンク先をご参照下さい)。

フィリピンにいても、出生前に認知されて日本国籍を持つ子供もいて、内外でアンバランスな状態が生じている。まず、日本在住の子供にこそ日本国籍を与えられるべきで、集団訴訟で問題提起したい。

これも奇怪です。
アンバランスなのは、法に則って国籍を取得した子供とそうでない子供を同列に扱うことでしょう。居住地がどこであるかは、問題ではありません。

人道的な観点で救済することは、国や民族などを限定して行うべきではないでしょう。しかし、彼らが要求しているのは救済ではなく、法を曲げることなのです。

区別を差別と言っているのです。

救済は、その線引きがキチンとしていてこそ、平等に行えるものでそこを曖昧にすれば、救済されるべき対象を無制限に広げ、秩序の維持ができません。
法は法として遵守しながら、法でカバーできないところを人道的な観点などからフォローアップするのが本来の姿ではないでしょうか?

法律でメシを食っているはずの弁護士が、法を曲げるように働きかけるのであれば、極論ですが、弁護士の存在意義はないのかもしれません。


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てっちん

こんにちは。
この件はTVで知っていたのですが、残念ながらこれは両親の責任で終了でしょう。もし訴えを認めたら類似のものがどんどんでてくるでしょうね。
ただ疑問なのは、訴えを起こした家族の生活状況について何も触れていないのはなぜでしょう。これら家族がどうしてこの訴えをおこしたのか気にはなります。
内容とそれますが、日本の弁護士って大丈夫なのでしょうか?
ピンきりといってしまえばそれまでですが。
by てっちん (2005-04-13 12:29) 

FD3S

てっちんさん、いらっしゃいませ。
いつもコメントありがとうございます。

>残念ながらこれは両親の責任で終了でしょう。
私もそう思います。自己責任の範疇だとおもいますから。
ただ、てっちんさんが仰るように生活状況次第では、救済すべきでは
あろうと思います。
止むを得ない事情があれば救済は認めるべきですが、法理は法理。
これを曲げれば、有象無象が出てくる可能性もありますから。

>日本の弁護士って大丈夫なのでしょうか?
私がこれを取り上げたのは、原告が非常識だからではなく、弁護士がおかしいと思ったからです。左翼教師の人権救済にしても弁護士の存在は看過できません。人権擁護法案に彼らも咬んでるのかなと思うと特定の意図があるのでは思います。
弱者を楯にして法理を曲げようとしているように思えて不気味です。原告の救済のみを考えるのであれば、他に方法があると思うのですが。
by FD3S (2005-04-13 19:33) 

てる

こんばんは。この手のニュースを見るたびに『なーに勘違いしてんだYO!』と思ってましたが・・・
自分達の落ち度を人や国のせいにするのは良くないですね。
この訴えが認められてしまったら、その方が問題だと思いますが。
by てる (2005-04-13 22:00) 

てっちん

地裁が認めちゃいました・・・orz
by てっちん (2005-04-14 10:19) 

FD3S

てるさん、いらっしゃいませ。
コメント&nice!をどうもありがとうございます。

別件ですが、東京地裁は違憲判決を出しましたね。特別な事情があるとのことですが、それと憲法解釈は別次元なんですけどね。
by FD3S (2005-04-14 10:40) 

FD3S

てっちんさん、いらっしゃませ。
コメントどうもありがとうございます。

認めましたね。今日の読売の一面に出てました。
これについてはエントリを立てようと思いますが、最高裁まで行けば
恐らく棄却されるか原告敗訴になると思いますが、余計な判例を出しましたね。東京地裁はよく、頓珍漢なことするから困りますね。
by FD3S (2005-04-14 10:42) 

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