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タイムラグ [2005年5月]

タイムラグ

先のエントリ「する」と「した」の間にあるものは、最初このエントリのタイトル「タイムラグ」としていました。ただ、内容的にしっくりこなかったのと、イラクで拘束されて斎藤昭彦さんの弟である斎藤博信さんの記者会見の記事を見て、このエントリのタイトルに使うことにしました。

ということで、読売、産経、毎日、朝日の順でみていきたいと思います。

YOMIURI ON-LINE / 社会
「兄の姿を映像で確認したい」斎藤さんの弟が会見

イラクで武装勢力に拘束されたとみられる英警備会社勤務、斎藤昭彦さん(44)の弟、博信さん(34)が12日午前、千葉市花見川区役所で会見し、錯そうする昭彦さんの安否情報について「生死にかかわらず、兄の姿を映像で確認したい」と疲れ切った様子で語った。

昭彦さんが「致命的」な傷を負っているのではないかとの情報については、同日朝、外務省から電話で、「そのような情報に一喜一憂することなく、しっかりしていてください」と励まされたという。

2005/5/12/12:47
Sankei Web 社会 斎藤さんの弟「映像で兄を確認したい」(05/12 12:28)
 

イラクで武装勢力に拘束されたとみられる斎藤昭彦さん(44)の弟、博信さん(34)は12日午前の記者会見「生死にかかわらず、兄の今の状況を映像で確認したい」と話し、「致命的な傷」などの情報が錯綜(さくそう)する中、揺れる胸の内を明かした。

博信さん宅には同日午前、外務省の担当者から2度電話があり「情報に一喜一憂しないで、しっかりしてほしい」などと励まされたという。

報道陣から「昭彦さんに伝えたいことは」と問われると「命ごいをするような人ではないと思う。自分の誇りと使命感を貫いてほしい」と話し、うつむいて涙ぐんだ。

05/12 12:28

MSN-Mainichi INTERACTIVE
イラク日本人拘束:斎藤さん重傷情報、外務省未確認 弟「一喜一憂しない」

イラクで斎藤昭彦さん(44)が拘束されたとみられる事件で、弟博信さん(34)が12日午前、千葉市内で会見した。会見前に2度も外務省から連絡があり、「昭彦さんが重傷という情報もあるが、外務省としてはそれが確実な情報とはしていない」などと伝えられたことを明らかにした。博信さんは「一喜一憂せず、しっかりしたい」と語った。

2005年5月12日 東京夕刊
asahi.com: 「誇りに思うが尊敬できない」 斎藤さんの弟が会見 - 社会
 

イラクで武装勢力に拘束された斎藤昭彦さん(44)=千葉市出身=の弟の会社員博信さん(34)は12日、記者会見「重傷との情報もあるが、確認がとれるまでは一喜一憂することなくいたいと思う」と話した。一報から2日以上が過ぎ、武装勢力に対して「どんな形であれ、(兄の)現状を撮ってぜひとも知らせてほしい」と述べた。

また、斎藤さんが仕事に取り組む姿などを報道で知ったといい、「(ずっと音信不通だった兄を)身近に感じ、動揺し始めている」と胸のうちを明かした。その上で「兄を誇りに思う。しかし、尊敬はできません」と話した。

2005年05月12日23時15分

このエントリは一旦書き上げたのですが、情緒不安定なソネブロちゃんがむずかったため、綺麗さっぱり消えてしまいました(泣)。
ということで、めげずにまた書き直してます。

まずは、タイトルを見比べてみましょうか。

>「兄の姿を映像で確認したい」斎藤さんの弟が会見(読売)

>斎藤さんの弟「映像で兄を確認したい」(産経)

>斎藤さん重傷情報、外務省未確認 弟「一喜一憂しない」(毎日)

>「誇りに思うが尊敬できない」斎藤さんの弟が会見(朝日)

そんなに分量のない同じ会見の記事なのですが、こんなにもタイトルが変るというのは驚きです。新聞の見出し(タイトル)は、ざぁっと目を通すだけの人もいますから、内容を正確に反映していることが非常に重要であると思います。

一見すると、読売と産経の記事(産経は共同配信、読売もかも)はタイトルから同じ内容を記事にしていることが分かりますが、下の2紙は別の会見の模様を伝えるかの如くです。

次に、5W1Hではないですが、「誰が」「いつ」「どこで」を見てみましょう。併せて記事が配信された時間も記してみます。

読売:2005/5/12/12:47
>博信さん(34)が12日午前、千葉市花見川区役所で会見

産経:05/12 12:28
>博信さん(34)は12日午前の記者会見

毎日:2005年5月12日 東京夕刊
>博信さん(34)が12日午前、千葉市内で会見

朝日:2005年05月12日23時15分
>博信さん(34)は12日、記者会見

並べて見るとこの会見が5月12日の午前中に千葉市花見川区役所で行われたことが分かります。
「誰が」については、言うまでもなく各紙とも同じですが、「どこで」は連日同じ場所で行っているためかもしれませんが、読売と毎日が触れているだけです。読売は詳細に書いています。
ネットはともかく、紙面は読む/読まないがありえるので限られた分量の中とは言え、書いている方がいいように思います。

ところで、「いつ」については朝日だけが「午前」という記述を落としています。

これは、配信された時間を見れば分かるような気がします。読売と産経は恐らく共同の配信記事を参考にしたのでしょうが、ほぼ同じ時間帯に配信しています。毎日は夕刊紙面に掲載していることからこの2紙とのタイムラグはさほど大きくないと考えられます。

朝日だけが、半日以上遅れて配信しています。
なぜ?反日だから?

朝日は記事配信の遅れを隠すために、「午前」を割愛したのではないでしょうか?(確認する限りないと思いますが、午後からも会見があったのかもしれませんから、朝日はそれを総合したのかもしれません。)

先のエントリでは、提訴する前に記事にするほどの朝日がこの記事はどうしてこれほど遅くなったのでしょうか?好き嫌いしてるのかな?

それでは、記事の中身をみてみます。

>「生死にかかわらず、兄の姿を映像で確認したい」と疲れ切った様子で語った。
(読売)

>「生死にかかわらず、兄の今の状況を映像で確認したい」と話し(産経)

>「どんな形であれ、(兄の)現状を撮ってぜひとも知らせてほしい」と述べた。

生死にかかわらずにお兄さんの映像を自分の目でみて、判断したいという博信さんの心情が吐露されたこの部分は、会見の重要な部分であり、割愛すべきではないんじゃなかろうかと思うのですが、毎日はカットしています。

読売や産経がタイトルに取り上げているこの部分ですが、「語った」、「話した」、「述べた」とあるようにいずれも博信さん自身が会見で話した内容です。
それにしては、読売、産経の記述と朝日の記述には違いがありますねぇ。

「生死にかかわらず」(読売、産経)=「どんな形であれ」(朝日)

「映像で確認したい」(読売、産経)=「ぜひとも撮って知らせて欲しい」(朝日)

共同配信記事を参考にしたであろう、読売と産経、それから半日遅れて記事にした朝日、いずれが博信さんの肉声を忠実に再現したかは、当の会見を見ていないのでわかりませんが、どちらかは明らかに表現を変えていると言えます。報道に正確さが求められるのは、当然のことですから、たとえ、同じように受取れる内容であっても変えることは問題があると思います。

>外務省から電話で、「そのような情報に一喜一憂することなく、しっかりしていてください」と励まされた

外務省の担当者から2度電話があり「情報に一喜一憂しないで、しっかりしてほしい」などと励まされた

読売と産経にあるこの記述から、外務省の職員が博信さんに2度電話をして、不安でいっぱいであろう博信さんに対して、未確認の情報に踊らされることなく気をしっかり持つように激励していたことがわかります。ところが、これを毎日新聞が伝えると次のようになります。

>会見前に2度も外務省から連絡があり、「昭彦さんが重傷という情報もあるが、外務省としてはそれが確実な情報とはしていない」などと伝えられたことを明らかにした。

>博信さんは「一喜一憂せず、しっかりしたい」と語った。

これは何としたことでしょうか?読売や産経の記事から見て取れる「外務省からの激励」はどこかに消失してしまいました。この記事だけを見ると、まるで外務省に情報収集能力がないかのような書き方になっています。

おまけに、その後の文では「一喜一憂」の主体が「外務省の電話」から「博信さん」に変っています。
尤も博信さんにしてみれば、外務省に言われずともそう思っていたかもしれませんが、会見でそういう情報を開示するということは、博信さんは外務省の対応を好意的に捉えていると考えられます。

読売・産経の記事を正とするならば、結果として「しっかりする」のは博信さんですから、毎日の記事も完全な誤報ではないと言えます。しかし、情報としては正確性に欠くうえに、誤解を招く表現であることは否めないと思います。

さて、朝日新聞ですが、外務省からの電話どころか、「一喜一憂」すら文字になっていません。

半日以上遅れて配信している上に、表現は違えど他の3紙が伝えている内容を落としているのは、朝日の記者は情報伝達能力が欠如しているのでしょうか?
恐らくこの会見はテレビでも報じられたと思います。となれば、活字メディアはそれを正確に、できるだけ早く伝達することが使命ではないでしょうか。 

産経の記事と朝日の記事には、博信さんの心境がそれぞれ記載されています。

>「命ごいをするような人ではないと思う。自分の誇りと使命感を貫いてほしい」と話し、うつむいて涙ぐんだ。

これは、兄、昭彦さんに伝えたいことは、という質問に答えた内容です。報道によって知った兄の姿、自分の知る限りの兄の性格を鑑みての言葉だろうと思います。
これから類推できることは、博信さんは、傭兵として働いている昭彦さんの誇りを尊重する姿勢が窺えると共に、だからこそ最悪の事態を想定しなければならない痛切な心情が伝わってきます。

この話と同じなのかは定かではありませんが、朝日は次のような文を記事の締めに持ってきています。

>「兄を誇りに思う。しかし、尊敬はできません」と話した。

「誇りに思う」も「尊敬できない」も、朝日にしかない文言です。同様に産経にしかない上の文と比較してもまるで異なる文章です。

この文の枕として、

>「(ずっと音信不通だった兄を)身近に感じ、動揺し始めている」と胸のうちを明かした。その上で、

とあります。

つまり、身近に感じ、傭兵として奮闘していた兄の姿を見て「誇り」に思われたのでしょう。ただ、過去の博信さんの会見から察するに、家族をはじめ政府、多くの国民に心配をかけ、迷惑をかけているという意味で「尊敬できない」となったと思われます。

朝日は、この「誇り」と「尊敬できない」をタイトルにしていることからも、会見で最も重要な部分がここだと感じたのでしょう。他紙にはまるで見ることができませんが。
朝日は外務省職員が「一喜一憂しないで気をしっかり持って」と激励したことよりも、生死にかかわらず、兄の映像を見たいと博信さんが思ったことよりも、「尊敬できない」を強調したかったのでしょう。

それは昭彦さんが「傭兵」だからではないでしょうか?

恐らく、朝日などの「サヨク」勢力は、「傭兵」としてイラクに赴いていた昭彦さんを快くは思っていないのでしょう。また、イラク派兵に関しても博信さんが機先を制して毅然とした態度を表明したことも苦々しく思っているのでしょう。

昨年の4月に、軽薄で甘っちょろい正義感を振りかざし、自己満足のためにイラクに行って拘束された3人とは別であるという報道もありました。

昨年、この3バカを擁護するために、彼らが言っていた言葉は、「人命は何よりも(地球よりも)重い」ではなかったでしょうか?そういう意見が平和団体や彼らから聞こえてこないのは、

人命には軽重があると考えているからに他なりません。

 

~~~~~~~

弟の博信さんは、兄の無事を誰よりも願っているであろうのに、気丈にも「自己責任」であると話されました。
これは、人命が貴重であるということを十分認識した上で、個人の選択に起因する部分に関しては自己の命を守ることも含めて自分の責任の中にあるということだと思います。

そう思いながらも、兄の無事を願わずにおれない博信さんはじめ家族、親類の皆さんの心情を、正確に伝達できないマスコミには深い憤りと強い不信感を改めて感じさせられました。


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鮎川龍人

なんか、FD3Sさまの分析が鋭いので、余計アサヒが嫌いになりました。
そして、あの兄にして、この弟あり。
素晴らしいご兄弟だと思いました。

無事でお帰りになって欲しいです。

てか、帰してくれたら、日本人の2割は親ムスリムになっちゃうかも。
by 鮎川龍人 (2005-05-14 03:26) 

FD3S

鮎川龍人さん、いらっしゃいませ!
コメントどうもありがとうございます。

過分なお褒めを頂戴して、恐悦至極(時代劇風)でございます!

>余計アサヒが嫌いになりました。
思想の背景が異なることはある程度是認できても、公正を装って狡猾に情報操作をすることだけは断じて許せません。それが朝日クオリティといえばそうなんですが・・・。

>素晴らしいご兄弟だと思いました。
>無事でお帰りになって欲しいです。
本当にそう思います。これは、昨年の彼らに対しても当然のように思ったことですが、事情がどうあれ、同じ日本人として誰しも普通に湧き上がる感情ではないかと思います。昨年の彼らの周辺では、これこそ「自己責任」だ!なんて喚く連中もいるやに聞きますが・・・。
思想に囚われると怖いですね、人命にすら軽重があると考えるようになるのですから。

>帰してくれたら、日本人の2割は親ムスリムになっちゃうかも。
それは、多いにありえますね。怪我の治療もした上で開放してくれればいいんですが。
by FD3S (2005-05-14 17:11) 

枇杷

前後の文脈を飛ばしてしまうと、かなり違う意味合いになりますよね。
本当に卑劣というか何と言うか>朝日

しかしそういったことに興味のないうちの家族だって、辛い感情を耐えて謙虚な対応をしている斎藤さんの弟さんについては、以前の連中の周囲の人間より余程に立派である、と捉えています。やはりイデオロギーがかかってない目というのは、理性的に判断しますよ。それに斎藤さんの職業があって守られているのは軍人だけではないです。それにつかまってめそめそなんてしてないだろうから、脅迫ビデオなんてのもさぞ撮りにくいことと想像しますね。
by 枇杷 (2005-05-15 00:27) 

FD3S

枇杷さん、こんばんは、いらっしゃいませ!
コメントどうもありがとうございました。

>前後の文脈を飛ばしてしまうと、かなり違う意味合いになりますよね。
私も、そう思って離して見ました。見出しの飛ばし読みでなく、ちゃんと全部読めば、博信さんの考えがわかるのですが、周囲を慮って謙って「尊敬できない」と言ったであろう言葉を、自己の主張のためにまるで鬼の首でもとったかのごとく書き立てる朝日はやはり卑劣ですね。
「サヨク」の習性として、目的(主張)のためには手段を選ばないというのがありますが、まさにそれを地で行く感じがしました。

日本で普通の会社に勤めているであろう博信さんにしてみれば、傭兵ビジネスは想像の範疇を超えているだろうと思います。それがたとえ実兄の仕事だとしても。それでも、兄の職業選択に対しては評価をして誇りに思っているのですから立派であると思います。

本人、家族とも覚悟は出来ているのだろうとは思いますが、無事に開放されることを願って止みません。
by FD3S (2005-05-15 00:57) 

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